地理歴史科

地理・歴史の学習は風と桶の関係を意識すべし

「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があるように、世の中ものごとには思いもよらない繋がりが存在します。地域特有の文化や歴史的事象の背景には、地域の気候や地形、一見関係ない他国の事件が影響しています。地理歴史科では、生徒が一つの事象を個別の点ではなく、繋がりのある線で捉えられるように授業を展開します。ここでは、本校の校歌を「風」に、さまざまな話の広がり(=「桶」)を見ていきましょう

身近なものから思考を広げる(歴史総合・日本史探究)

本校の校歌の歌詞に「努力の神」という言葉が出てきます。これは一体、何を意味するのでしょうか? 戦前戦後の宗教政策を考えることができます。資料や聞き取り調査によると、「努力の神」とは、かつて本校に設立された「努力神社」(祭神は諸説あり)であると判明しました。ところが戦後、隣にあった奉安殿とともにGHQの指示で撤去され、いまは存在しません。このように、校歌をきっかけに、日本の宗教政策や占領政策の歴史へ考えを広げることができます。
日本史探究では上記のように、資料をもとに事象を多角的に見つめる力を養い、それらを通して社会を生き抜く力を身につけます。

歴史総合・日本史探究の取り組み

  • 居住地域の歴史レポート…単なる「地元に関する調べ学習」ではなく、引用方法や章立て構成、論理の展開など、論文・レポート作成の基礎を身につけることが目的です。
  • 博物館改善案を発表…「もしも私が博物館再建計画を提案するなら…」そのような前提に立ち、実在する博物館の来場者数アップ術を考え、提案します。現実的かつ効果的な方法であることはもちろん、発表方法にもこだわり、より伝わる発表方法を身につけます。

世界の歴史を学ぶのではなく・・・(歴史総合・世界史探究)

二番の歌詞は、今は歌われず、式典などでも”一番の次は三番”となっています。その二番の歌詞から、作詞当時の世界を見てみましょう。
「産業革命=モノ作りの機械化」は、お金や軍隊など、目に見える力を持っている国とそうでない国の差を生み、力を「持っている国」中心の世界、資本主義の世界を生みました。
そのバランスが崩れた世界恐慌の年に誕生したのが、前身となった実業高校。今は歌われなくなった幻の2番の歌詞には、経済界で活躍し日本を「持っている国」に押し上げるような人材を育成しようとしたことがうかがわれます。
作曲した山田耕筰氏も、財閥の後援を受け西洋音楽を学び、演奏活動を行った国や地域はその時々の国際情勢とリンクしています。世界史は、あらゆる世界を旅する学問なのです。

歴史総合・世界史探究の取り組み

  • 世界史事件簿・・・・世界史に登場する事件・人物について、グループ毎に調べ、作成した動画で紹介・発表します。1つの事柄を多角的にとらえる視点と、固定概念にとらわれない自由な発想力を養います。
  • 国旗調査レポート・・・自分で選んだ国旗の歴史と、その国と日本との関係を調べてレポートを作成します。国際社会が、地域や国家相互の関わりに基づいて成り立っているというイメージを持たせることがねらいです。

地形から地域・日本全体を考える(地理総合・地理探究)

三番の歌詞にある「仰ぐ富士が嶺」は、文字通り日本一の標高を誇る富士山。武蔵野台地の本校から水平距離にして90km先にあり、仰角はたったの2.29度。でも、手前にそびえる丹沢山地の背後から、はるかに高く山頂が飛び抜けて見える独立峰の姿は、仰角以上に荘厳さを感じるでしょう。
世界遺産にも登録された富士山を教室から眺めれば、日本人の宗教観、芸術観を体感し、見つめ直す機会になるでしょう。また、本校から富士山までの90kmには、日本列島の成り立ちを考える要素が盛りだくさんです。

また、三番には「和泉の流れ」という歌詞もあります。本校の所在地は杉並区和泉という地名です。資料によると和泉という地名は、域内の和泉貴船神社に存在する御手洗の井が語源であるそうです。
また、本校の北を流れる神田川は古くから人々の生活用水に使われるなど、水に恵まれた地であったことが推測されます。本校周辺に立地する学校の校歌からも「富士」や「高嶺」、「上水」や「小川」などの言葉が見られます。

ぜひ一緒に教室の眺望から2000万年の自然史を想像してみましょう!

地理総合・地理探究の取り組み

  • 手描き地図作成…夏休み期間の課題として、居住地域や自身が興味のある地域の手描き地図を作成しています。自らテーマを設定して、実際に現地に足を運び、地域の特性を確認させることが目的です。

受験地歴(他大学進学コース)

本校で他大学を受験する生徒は少ないですが、地歴科は大きな目標に向かって突き進む生徒達をサポートします。地理・世界史・日本史ともに講義形式を中心に、定期的な演習や総合型選抜に向けた指導など、少人数だからこそできる指導を実践しています。

ゴール(桶)を見据え、それに伴うさまざまな準備(風)を計画的に提供します。

選択講座

…今、私たちが済んでいる街はどんな成り立ちがあるのだろうか? 観光地はなぜ観光地として有名なのか? そのようなみんなの地元である東京の歴史を知るための講座です。

…地域の人との交流を通して、和泉の「地域力」アップを目指します。ハロウィンパーティーや幼稚園生との交流など、幅広く、楽しく活動します。

地理歴史科が担当するイベント

  • 世界史・日本史夏期講習講座…他大学受験を目指す三年生を対象とした夏期講習です。一日3時間×3日の講習を7月末と8月末に2度行い、基礎知識の早期定着を目指します。講習後の生徒は新泉校舎で自習したり、塾の講習に参加したりします。